前回は、甲状腺未分化癌について説明しました。今回は甲状腺腫瘍の診断に必要な、エコー下甲状腺穿刺吸引細胞診の実際について説明します。昔はエコー機の性能が悪く、甲状腺腫瘍の様子が正確に評価できませんでした。このため腫瘍を直接穿刺して細胞を採取していました。このため針の先が腫瘍のどの部位にあるのかは勘で判断するしかない時代でした。パソコンの性能が良くなったのと同じで、エコー検査の画像も飛躍的に改善しました。そして、甲状腺の奥深い部位や小さな甲状腺腫瘍も細胞診を実施可能となりました。
現在、立川相互病院エコー室にて年間約200名の患者さんに実施しています(若い方は20才から、最も高齢の方は94才の女性まで実施可能でした)。さて、この細胞診の方法は、(1)エコー検査を実施し、甲状腺腫瘍の位置とサイズと血流を正確に再確認します。(2)細胞を吸引するための穿刺ライン(針が入ってゆく道すじ)を エコー画面の中で確認します。針自体は通常の採血針をほぼ同じ太さです。長さは70~90mmを使います。(3)針の入る部位に皮膚麻酔剤入りのゼリーを塗布します。その後約5分間まちます。この間に、穿刺に必要な道具を揃えます。(4)ゼリーをふき取り、消毒をした後に、先ほどの穿刺ラインを 再確認し針をゆっくり刺入します。腫瘍内に針の先端が うまく入ったことをエコー画面にて確認後、針の先端を回転させて細胞を剥がした後に、注射器のピストンを数回引いて細胞を吸引します。実際には、一回の穿刺に必要な時間は 5~10秒程度です。(5)針を引き抜いて終了し、刺入部位を圧迫止血します。
(6)腫瘍が何個もある方は、この検査を反復します。(7)針の刺入部位の皮膚にカットバンを貼ります。(8)すべての細胞診検査が終了したら、検査室より退室していただき、約10分後に再度穿刺部位を私が確認し終了です。細胞診の結果は、およそ10日後に外来を再受診していただき説明します。